コロナ制圧タスクフォースが5月18日、日本人集団における新型コロナウイルス感染症の重症化に関わる遺伝子多型(バリアント)の有力候補を発見したことを発表しました。
コロナ制圧タスクフォースは、慶應義塾大学や東京医科歯科大学などから感染症学や遺伝統計学など様々な分野の専門家が参加する共同研究グループで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威に立ち向かうため、2020年5月に立ち上げられました。2021年4月末の時点で、3,400人以上の患者さんから血液検体と臨床データを集積し、新型コロナウイルス感染症に関するアジア最大のバイオレポジトリーとなっています。
今回、研究チームは、非高齢者(65歳未満)の重症患者群440名と対照群2,377名のDNAを比較するゲノムワイド関連解析を実施し、5番染色体上の領域(5q35)のヒトゲノム配列の多型(バリアント)が、約2倍の重症化リスクを有することを発見しました。この領域には、Dedicator of cytokinesis 2 (DOCK2)という免疫機能に重要な役割を担う遺伝子が含まれていました。DOCK2遺伝子領域のバリアントは日本人を含む東アジア人集団で高頻度(約10%)に見られる一方、欧米人集団では低頻度であることから、日本人を含むアジア人集団に特有の重症化因子の有力候補である可能性が考えられます。ただし、DOCK2遺伝子領域のバリアントだけでは重症化の集団間の違いを説明することはできず、さらに症例数を増やした解析による追認検証も含めた、今後も更なるゲノム研究の継続が重要とされています。
また、研究チームは、日本人集団におけるABO式血液型と新型コロナウイルス感染症との関わりを調べた結果、集団全体と比較してO型の人は重症化リスクが低く(約0.8倍)、AB型の人は重症化リスクが高く(約1.4倍)なる傾向が見られたことを併せて報告しています。
さらに、基礎疾患や体質と重症化との関りについて、因果関係を推測できる高度な遺伝統計解析手法であるメンデルランダム化解析の結果として、肥満や痛風・高尿酸血症と新型コロナウイルス感染症の重症化リスクとの因果関係を示唆する結果が得られたとしています。この結果は、肥満や痛風・高尿酸血症が直接的に新型コロナウイルス感染症の重症化の原因となっていることを示唆すると考えられています。
・「コロナ制圧タスクフォース」日本人集団における新型コロナウイルス感染症重症化因子の有力候補を発見-アジア最大のグループとして新型コロナウイルス感染症国際ゲノム研究にも大きな貢献- | 慶應義塾大学
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