気になる生化学シリーズ、今回は糖質の4回目として、糖質の性質をみていきましょう。
今回のクエスチョンはこちら、
- 還元性とはどんな性質?
- 還元糖を見分ける構造式の見方は?
こうした問いに答えられるよう解説したいと思います。
還元性
糖質の定義では、糖質の構造の共通点として、アルデヒド基かケトン基のいずれかが必ず含まれることをお話しました。
糖質の性質として、このアルデヒド基が示す還元性が重要な性質です。一方のケトン基はそのままでは還元性を示しませんが、ケトースのケトン基はアルデヒド基と入れ替わることができ、その結果、還元性を示すことができます。
還元性とは、他の分子から酸素を奪ったり、水素や電子を与えたりする性質のことで、このような能力を還元力といいます。
すべての単糖類は還元性を示します。アルドースならアルデヒド基、ケトースならケトン基をもっていますので。
二糖類ではどうでしょうか?二糖類では、マルトースとラクトースは還元性を示しますが、スクロースは還元性を示しません。
マルトースとラクトースでは、もともとの単糖の片方はアルデヒド基が結合に関わってなくなってしまいますが、もう一方のアルデヒド基がフリーの状態で残っていますので、還元性を示すことができます。しかし、スクロースでは、2つの単糖のいずれについても、アルデヒド基の部分が結合に使われるため、還元性を示すことができません。
デンプンやグルコースなどの多糖類については、起点となる末端にアルデヒド基が残ってはいるものの、その他のアルデヒド基はすべて結合に関わってなくなっていますので、多糖類全体としては還元性を示さないものとみなされます。
フェーリング反応
還元性を検出する試験として、フェーリング反応やベネディクト反応があり、これらの反応によって還元糖の存在を検出することができます。
フェーリング反応は、CuSO4水溶液および酒石酸カリウムナトリウム溶液(NaOH水溶液に溶解)を加えて加熱することで、還元糖が水酸化第二銅イオンCu2+(Cu(OH)2)と反応し一価の亜酸化銅Cu+(Cu2O)となり赤色沈殿を生じる反応です。
この反応では、銅イオンが酸化数+IIのCu2+から酸化数+IのCu+になり、このようにアルデヒド基の還元力によって、酸化数の減少が起こります。
今回のポイント
還元性
- 還元性:他の分子から酸素を奪ったり水素や電子を与えたりする性質。
- 糖の構造うちアルデヒド基が還元性を示す。一方、一般のケトン基は還元性を示さないが、ケトースのケトン基は変化してアルデヒド基を形成するため還元性を示す。
- 還元性を示す糖を還元糖という。
- 還元糖:すべての単糖類および一部のオリゴ糖類(例)マルトース、ラクトース)
- 還元性はフェーリング反応やベネディクト反応で検出される。
丁寧な解説、いつもありがとうございます。
糖類の還元性について質問です。
どのような参考書やネットを見ても、糖の還元性がある・なしについての解説を見かけますが、糖に還元性があることでどんな利点や良いこと?があるのでしょうか?
ブルワーさん、こんにちは。
当ブログをご覧いただきありがとうございます。
糖の還元性は、例えば尿中の糖(グルコース)を検出するために利用されます。
正常な尿に糖は存在しませんが、疾患によって尿に糖が出てくることがあります。
しかし、尿の見た目は変わりませんので、糖の還元性を利用して検出するということです。
もう少し具体的には、グルコースオキシダーゼという酵素を利用します。
還元性を持つグルコースにグルコースオキシダーゼが触媒することで、酸素が過酸化水素に還元されます。
この過酸化水素が色素を発色させることで糖の存在が観察されます。
病院や健診でよくみる試験紙にはこの原理が利用されています。