気になる生化学シリーズ、今回は核酸の2回目として、核酸の性質のお話です。
今回のクエスチョンはこちら、
- DNAの変性ってどうなること?
- DNAはどうやって検出されるの?
こうした問いに答えられるよう解説したいと思います。
Contents
DNAの変性とアニーリング
二本鎖DNAは、高熱や強アルカリにさらされると二本鎖構造が崩壊し、一本鎖構造になります。これをDNAの変性といいます。DNAの変性では、二本鎖の塩基間で形成されていた水素結合が切断されますが、糖とリン酸からなる骨格部分の結合は保たれたままになります。
DNAを熱で変性させるとき、溶液中のDNAの半量が変性する温度をTm(融解温度)といいます。TmはDNAの構成によって変化し、GC含量(グアニンとシトシンの割合)が多いほどTmが高くなります。これは、A-T間よりもG-C間のほうが水素結合の数が多く、強く結合しているためです。
一方、熱変性した一本鎖DNAは、ゆっくり冷却することで再び二本鎖構造に戻ります。これをDNAのアニーリングまたは再生といいます。この点では、一度変性すると元に戻らないタンパク質とは性質が大きく異なります。
DNAのアニーリングは塩基間の相補性によって導かれます。つまり、一本鎖DNAどうしの間で、ATあるいはGCのペアが自然な形で形成されるように二本のヌクレオチド鎖が結合していきます。
なお、アニーリングはもともと二本鎖を形成していたヌクレオチド鎖同士でなくても、相補的な塩基配列をもつヌクレオチド鎖間であれば、DNA鎖とRNA鎖の間でも形成することができます。こうしたDNA鎖とRNA鎖との間で形成された二本鎖をハイブリッド鎖といいます。
紫外線吸収
DNAやRNAは、タンパク質と同じように、紫外線を吸収する性質があります。
これは核酸を構成する塩基に起因するもので、吸収スペクトルでは波長260 nm付近の紫外線に吸収極大を示します。
これを利用して、溶液中のDNA濃度を測定することができます。例えば、DNAの濃度(μg/ml)は吸光度A260×50で算出されます(光路長1 cmの場合)。
なお、核酸の構造によって紫外線の吸収が変化し、二本鎖DNAは一本鎖DNAやRNAより吸収が小さくなります。このことから、二本鎖DNAが変性すると紫外線吸収が増加します(濃色効果)。
今回のポイント
DNAの変性とアニーリング
- 熱やアルカリによって、二本鎖DNAの水素結合が切れて一本鎖になることをDNAの変性という。
- 溶液中のDNAの半量が変性する温度をTm(融解温度)という。DNAのGC含量が多いほど二重らせん構造が安定するためTmが高くなる。
- 熱変性した一本鎖DNAはゆっくり冷却すると再び相補的な塩基対が形成されて二本鎖構造に戻ることができる。これをDNAのアニーリング(再生)という。
- DNA鎖とRNA鎖との間で形成された二本鎖をハイブリッド鎖という。
紫外線吸収
- DNAは紫外線をよく吸収し、塩基に起因して波長260 nm付近の紫外線に吸収極大を示す。
- 二本鎖DNAは一本鎖DNAやRNAより吸収が小さい。
- 二本鎖DNAが変性すると紫外線吸収が増加する(濃色効果)。