生化学

核酸の構造と種類

気になる生化学シリーズ、今回は核酸の1回目として、核酸の構造と種類のお話です。

核酸とはDNAやRNAのことです。これらがどのような構造をしているのか見ていきましょう。

今回のクエスチョンはこちら、

  • 核酸はなにがつながってできているの?
  • DNAとRNAの違いは?
  • 二重らせん構造とは?
  • ホスホジエステル結合ってどんな結合?
  • RNAにはどんな種類があるの?
  • 低分子核酸ってどんなの?

こうした問いに答えられるよう解説したいと思います。

核酸の基本構造

核酸は多数のヌクレオチドが鎖状につながった高分子有機化合物です。

ヌクレオチドは、塩基リン酸からできています。

ヌクレオチド=塩基+糖+リン酸

また塩基が結合したものをヌクレオシドといいます。

ヌクレオシド=塩基+糖

このうち糖の部分は五炭糖のリボースまたはデオキシリボースのどちらかで、リボースの場合の核酸がRNAribonucleic acid、リボ核酸)、デオキシリボースの場合の核酸がDNAdeoxyribonucleic acid、デオキシリボ核酸)です。

一方、塩基の部分はアデニン(A)グアニン(G)シトシン(C)チミン(T)ウラシル(U)のどれかです。このうちアデニン、グアニン、シトシンはRNAとDNAに共通ですが、チミンはDNAにのみ、ウラシルはRNAにのみ使われます。

また、塩基は構造上の特徴からプリン塩基ピリミジン塩基にわけられます。アデニンとグアニンがプリン塩基、ウラシル、シトシン、チミンがピリミジン塩基に分類されます。

リン酸は固有の構造をもつ化合物で、五炭糖の5’位の炭素に1~3個結合します。DNAやRNAの長い鎖を構成するのはリン酸が1個のヌクレオチドです。

ヌクレオチドは塩基、糖、リン酸の種類や数によって呼び名がついています。

DNAの構造

細胞の核のなかに存在するDNA(デオキシリボ核酸は、細く長いひも状の物質で、このひもヌクレオチドが多数連結したヌクレオチド鎖ポリヌクレオチドによってできています。遺伝子では、ヌクレオチド鎖を構成する塩基配列(シークエンス)が遺伝情報となって、タンパク質のアミノ酸配列を指定しています。

さらに、DNAでは、2本のヌクレオチド鎖が互いに逆向きになって向かい合い、10ヌクレオチドごとに1回転する構造をとっています。これをDNAの二重らせん構造といいます。らせんの巻き方は基本的に右巻きです。

1本のヌクレオチド鎖に注目したとき、塩基は結合に関与しておらず、糖とリン酸が交互につながってヌクレオチド鎖の骨格部分を形成しています。このときヌクレオチド間では、デオキシリボースの3’位の炭素と5’位の炭素がリン酸を介して結合する形となり、この結合をホスホジエステル結合(リン酸ジエステル結合)といいます。また、ヌクレオチド鎖には方向性があり、デオキシリボースからみて5’末端側を上流、3’末端側を下流といいます。

一方、2本のヌクレオチド鎖の間では、互いの塩基が内側に向きあう形になり、ヌクレオチド鎖間で水素結合することによって塩基がペアを形成します。これを塩基対といいます。塩基対の組合せは、アデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)のペアと決まっています。このように片方が決まれば相手側が自動的に決まる関係を相補的であるといいます。

また、塩基対の水素結合は、A-T間が2本、G-C間が3本の水素結合を形成するため、GC含量(グアニンとシトシンの塩基対の割合)が多いDNAはAT含量(アデニンとチミンの塩基対の割合)の多いDNAに比べて結合が強くなります。

なお、真核生物のDNAは直鎖状で末端がありますが、原核生物のDNAは環状で末端がありません。

RNAの種類と構造

RNA(リボ核酸は遺伝情報の発現を仲介するなど様々な役割をもつ核酸で、mRNA、rRNA、tRNAなど様々な種類があります。

RNAの構造は基本的にはひとつながりのヌクレオチド鎖からなる一本鎖構造です。ただし、分子内で相補的な塩基対を形成して、部分的に二本鎖構造をとる場合もあります。

mRNA(メッセンジャーRNA)は、核内でDNAの遺伝情報を転写しリボソームに送り届けるRNAで、5’末端に5’キャップ、3’末端にポリAテイルという構造をもちます。

rRNAボソームRNAは、リボソームの構成成分となるRNAで、タンパク質合成の場を形成します。

tRNAトランスファーRNAは、アミノ酸と結合してリボソームへ運搬するRNAで、特徴的なクローバー型構造をもちます。

miRNA (マイクロRNA、microRNA)は、20~25塩基程度のRNAで、特定の標的遺伝子に結合し発現を抑制することが知られています。最近では、がん細胞が分泌する小胞(エクソソーム)に含まれるmiRNAががんの転移に関与していることが明らかになり、注目が集まっています。

低分子核酸

核酸には、DNAやRNAのような高分子化合物のほかに、低分子の核酸として生体内で様々な役割を果たすものがあります。

低分子核酸には、ヌクレオチドの形をとるものや塩基が変化したものなどがあります。

ATP(アデノシン三リン酸)は、アデノシンに3つのリン酸が結合した化合物で、エネルギー運搬体として働きます。

cAMPやcGMPは、細胞内で二次情報伝達物質として働きます。

CoA、FAD、NAD、NADPは、補酵素の構成成分となります。

尿酸やカフェインは塩基の誘導体です。

今回のポイント

Check!

核酸の基本構造

  • 核酸の構成単位
    ヌクレオチド=塩基+糖+リン酸
    ヌクレオシド=塩基+糖
  • 糖(五炭糖)
    リボース→ RNA(リボ核酸)
    デオキシリボース→ DNA(デオキシリボ核酸)
  • 塩基
    プリン塩基 →アデニングアニン
    ピリミジン塩基 →シトシンチミンウラシル
    このうちチミンはDNAにのみ、ウラシルはRNAにのみ含まれる。
  • リン酸は五炭糖の5’位の炭素に1~3個結合する。

DNAの構造

  • DNAはヌクレオチドが多数連結したヌクレオチド鎖(ポリヌクレオチド)からなる。その鎖を構成する塩基配列(シークエンス)が遺伝情報となる。
  • DNAは右巻きの二重らせん構造をとり、互いに逆向きの2本のヌクレオチド鎖が向かい合い、10ヌクレオチドごとに1回転する。
  • ヌクレオチド鎖の骨格を形成するヌクレオチド同士の結合をホスホジエステル結合という。ヌクレオチド鎖には方向性があり、5’末端側(右図上方)を上流、3’末端側(右図下方)を下流という。
  • 塩基は二本鎖の内側に向きあって水素結合を形成している。このとき結合する塩基の組み合わせ(塩基対)は決まってアデニンチミングアニンシトシンのペアとなり、このように片方が決まれば相手側が自動的に決まる関係を相補的であるという。塩基対の水素結合は、A-T間が2、G-C間が3の水素結合を形成するため、GC含量が多いDNAはAT含量の多いDNAに比べて結合が強くなる。
  • 真核生物のDNAは直鎖状で末端があるが、原核生物のDNAは環状で末端がない。

RNAの種類と構造

  •  RNAは基本的に一本鎖構造をとるが、分子内で相補的な塩基対を形成して、部分的に二本鎖構造をとる場合がある。
  • mRNA(メッセンジャーRNA):核内でDNAの遺伝情報を転写しリボソームに送り届けるRNA。5’末端に5’キャップ、3’末端にポリAテイルという構造をもつ。
  • rRNA(リボソームRNA):リボソームの構成成分となるRNAで、タンパク質合成の場を形成する。
  • tRNA(トランスファーRNA):アミノ酸と結合してリボソームへ運搬するRNA。特徴的なクローバー型構造をもつ。
  • miRNA(マイクロRNA): 20~25塩基程度のRNAで、特定の標的遺伝子に結合し発現を抑制する。

低分子核酸

  • 高エネルギーリン酸化合物:ATP(アデノシン三リン酸)
  • 二次情報伝達物質:cAMP、cGMP
  • 補酵素の構成成分:CoA、FAD、NAD、NADP
  • 塩基の誘導体:尿酸、カフェイン

はなたか先生
はなたか先生
今回はここまで!

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)