気になる生化学シリーズ、今回は水のお話です。
水は生体にもっとも多く含まれる物質です。
水は体内で、酵素反応の場、栄養素・ガス・ホルモン・老廃物などの運搬、体温の保持・調節などに働きます。
今回のクエスチョンはこちら、
- 体内に水はどこにどれくらいあるの?
- 1日に摂取する水分と排泄する水分はどんなの?
こうした問いに答えられるよう解説したいと思います。
水の分布
生体を構成する物質でもでてきましたが、水は体重の60%くらいを占めていて、体のなかでもっとも多い物質です。
体内の水分(体液)のうち、2/3(体重の40%)は細胞内にある細胞内液、1/3(体重の20%)は細胞外にある細胞外液です。細胞外液には、組織液(間質液)、血漿、リンパ液、脳脊髄液、消化液などが含まれます。
例えば、体重が60 kgの人では、体液全体が36 Lあり、そのうち細胞内液が24 L、細胞外液が12 Lあることになります。
体液の量は年齢によって変化し、新生児では80%ほどありますが、成人では60%、高齢者では50%と、加齢とともに減少していきます。
水の出納
一般的な成人では、毎日2.5 Lの水が摂取される一方で、同じ量の水が排泄されています。これを水の出納といいます。
出納は「すいとう」と読み、国語辞典では次のように説明されています。
すいとう【出納】-
①出すことと入れること。だしいれ。すいのう。しゅつのう。
②金銭または物品の収入と支出。「-係」
③蔵人所(くろうどどころ)に属し、財物・文書の出納などをつかさどった職。→主典代。
出典:広辞苑 第七版(岩波書店、2018)
つまり、水の出納とは、体内への水の出し入れのことです。
摂取する水と排泄される水の量のバランスは、体内で調節され保たれています。
摂取する水は、飲料水のほか、食物に含まれる水分や代謝水に由来します。
代謝水とは、体内で栄養素が酸化分解される過程で生じる水分のことです。糖質、脂質、タンパク質それぞれからエネルギーを取り出す過程で、次のように水が発生します。
・糖質1 g:0.56 mL
・脂質1 g:1.07 mL
・タンパク質1 g:0.41 mL
一方、排泄される水は主に尿として排泄されますが、尿には不可避尿と随意尿があります。不可避尿は体内で生じる老廃物の排泄に最低限必要となる尿で、400~500 mL/日ほどあります。随意尿は摂取した水分量によって調節される尿で1000 mL/日ほどです。よって、尿としてあわせて1,400~1,500 mL/日ほど排泄されます。
ほかに、不感蒸泄や糞便を通しても水が排泄されます。
不感蒸泄とは皮膚から蒸発する水分や、肺から呼気とともに出ていく水分のことで、あわせて900 mL/日ほどあります。
糞便には消化管で分泌された消化液の水分が含まれます。実は、消化管では毎日8 Lもの消化液が分泌されていますが、そのほとんどが腸管で吸収されますので、糞便に含まれる水分は100 mL/日ほどになります。
今回のポイント
水の分布
- 体液(体重の60%):
・細胞内液(40%)
・細胞外液(20%):組織液(間質液)15%、血漿5%、リンパ液、脳脊髄液、消化液 - 体液量は加齢とともに減少する。例)新生児80%→成人男性60%女性50%→高齢者男性50%女性45%
- 水は体内で、酵素反応の場、栄養素・ガス・ホルモン・老廃物などの運搬、体温の保持・調節などに働く。
水の出納
- 1日に2.5 Lの水が摂取され、排泄される。
- 水の摂取のうち、体内で栄養素が酸化分解される過程で生じる水分を代謝水という。糖質、脂質、タンパク質1gあたり、それぞれ0.56 ml、1.07 ml、0.41 mlの水が生じる。
- 老廃物の排泄に最低限必要な尿を不可避尿という。
- 皮膚からの蒸発や肺からの呼気に含まれて水分が排泄されることを不感蒸泄という。
- 1日~8 Lの消化液が消化管内に分泌されるが、その大部分が腸管で吸収される。