生体は糖、脂質、タンパク質、核酸といった有機化合物で構成されています。生化学ではこれらの構造と機能を結び付けて理解していきますが、その前に有機化合物について基本的なことを解説します。
有機化合物とは
有機化合物は炭素を骨格とする化合物の総称です。
炭素の元素記号はCです。
よって、有機化合物の構造式ではCとCがつながっている様子がみられます。
構造式の見方
有機化合物の構造式をみるうえで注意しておくことがあります。
それは
・骨格のCは省略される
・当然あるはずのHは省略される
ということです。
プロパンという物質の例をみてみましょう。
有機化合物は炭素を骨格とするため、構造式にはとにかくCがたくさん含まれます。そのためCを省略して表現する習慣があります。また、H(水素)も普遍的によく含まれる元素です。よって、当然あるはずの場所にあるHならば、省略して表現する習慣があります。
有機化合物の表現
さて、すでに構造式はでてきていますが、有機化合物には構造式のほか、分子式、示性式、分子モデルなどいくつかの表現方法があります。
分子式:C,H,O,Nの順で元素記号と数を表現したもの。
構造式:構成する原子の結合関係がわかるよう図式的に示したもの。
示性式:有機化合物の特性を明示する官能基をわけて書いたもの。
分子モデル:立体的な分子の形がわかるように構造をイラスト化して表現したもの。
官能基
有機化合物の構造のなかで、特定のパターンが共通で見られることがあります。これらを官能基といいます。共通の官能基をもつ有機化合物は共通の性質をもつため、官能基をみることでその有機化合物の特性を知ることができます。
立体異性体
有機化合物のなかには、同じ構造式であっても立体的にはいくつか違った構造をとることができるものがあります。このようなものを立体異性体といいます。
立体異性体にはシス・トランス異性体と鏡像異性体があります。
シス・トランス異性体
炭素の二重結合を中心にその左右で位置関係が異なるものをシス・トランス異性体といいます。
鏡像異性体
2つの異性体の立体構造が、鏡に映したような関係にあるものを鏡像異性体といいます。
鏡像異性体は、1つの炭素原子に4つの異なる原子(原子団)が結合しているときに生じます。このとき、中心となる炭素原子を不斉炭素原子といいます。
今回のポイント
- 有機化合物は炭素を骨格とする化合物です。有機化合物の構造式を簡略化すると、骨格となる炭素は折れ線の角や末端で表現され、水素は省略されます。
- 有機化合物の性質は官能基で決まります。
- 構造式が同じでも立体的な構造が異なる化合物を互いに立体異性体といい、シス・トランス異性体や鏡像異性体(エナンチオマー)があります。鏡像異性体で、4つの異なる原子(原子団)が結合している炭素原子を不斉炭素原子といいます。