気になる生化学シリーズ、前回の「生体を構成する物質」では、生体はタンパク質、脂質、糖質、核酸といった有機化合物が中心となって構成されていることをお話しました。今回からは、これらの生体物質それぞれについて、さらに詳しくお話したいと思います。
今回は糖質の1回目として、糖質の定義と分類からみていきましょう。
今回のクエスチョンはこちら、
- そもそも糖質とはどんなもの?
- 炭素につける番号のルールは?
- 主な単糖類はどんな構造式をしているの?
こうした問いに答えられるよう説明したいと思います。
糖質の定義
始めに糖質って聞いてどんなイメージがありますか?
有名な国語辞典を見ると、次のように書かれています。
とうしつ【糖質】-
炭水化物およびその誘導体の総称。蛋白質・脂質に対する語。
出典:広辞苑 第七版(岩波書店、2018)
「甘い」とはどこにも書いていませんよね。実は、糖質は甘いものとは限らないのです。
一方で、ここに書いてあるように、糖質と炭水化物という言葉は同じ意味です。あとで構造についてお話しますが、糖質の構造は炭素と水素が中心となっているため炭水化物と呼ばれます。
では、糖質(炭水化物)とされる物質の共通点はなんなのか?それは以下のように定義されます。
糖質とは、ケトン基またはアルデヒド基のいずれかと、2つ以上の水酸基(ヒドロキシ基)をもつ化合物の総称である
ケトン基、アルデヒド基、水酸基は以前お話した官能基の名称ですね。構造にこれらを含んでいる化合物が糖質とされます。
次にもう少し具体的にみましょう。
単糖類の分類と名称
糖質は単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類などに分けられます。
そのうち、単糖類が糖質の最小単位です。まずはこの単糖類の構造についてお話します。
単糖類の一般式
単糖類は次のような一般式で表される炭素と水素からなる化合物(炭水化物)です。
Cn(H2O)n
ただし、炭素の数(n)は3個以上です。2個までの場合には糖質ではありません。
また、炭素の数(n)によって、n=3なら三炭糖(トリオース)、n=4なら四炭糖(テトロース)、n=5なら五炭糖(ペントース)、n=6なら六炭糖(ヘキソース)というように呼びます。
アルドースとケトース
また、定義にあったように、糖質は必ずケトン基またはアルデヒド基のいずれかを含みますが、そのいずれを含むかによって、以下のように呼び分けられます。
アルドース:アルデヒド基を含む単糖
ケトース :ケトン基を含む単糖
炭素原子の番号
糖質は炭素原子を多く含みますが、その炭素を区別するために、炭素に番号を付けて呼ぶことが多くあります。その際の番号順のルールが次のようになっています。
鎖状構造において、カルボニル基に近い側の末端から順に炭素原子に番号を振る
ここで、カルボニル基とはアルデヒド基とケトン基のことを指します。
例をみてみましょう。
炭素を区別する場面では、その番号によって1位の炭素やC1のように呼びます。
主な単糖類
代表的な単糖類の構造についてみてみましょう。
グルコース
グルコースは動植物の体内に存在する最も基本的な六炭糖です。
ガラクトース
ガラクトースは寒天に多く含まれている六炭糖です。
マンノース
マンノースはこんにゃくに多く含まれている六炭糖です。マンナンライフというこんにゃくゼリーの会社がありますね。
フルクトース
フルクトースは果物や蜂蜜などに多く含まれている六炭糖です。グルコースよりも甘みが強い単糖です。
リボース
リボースは核酸の成分となる五炭糖です。
今回のポイント
糖の定義
- 糖=(ケトン基 or アルデヒド基) and 2つ以上の水酸基(ヒドロキシル基)をもつ
単糖類の分類と名称
- 糖の最小単位は単糖類。
- 一般式Cn(H2O)nで表される炭素と水素の化合物(炭水化物)。ただしnは3個以上である。
- 【 炭素 】の数(n)から三炭糖、四炭糖…のようによぶ。
別名:三炭糖→トリオース、四炭糖→テトロース、五炭糖→ペントース、六炭糖→ヘキソース - アルデヒド基をもつ単糖をアルドース、ケトン基をもつ単糖をケトースという。
- 鎖状構造においてカルボニル基(アルデヒド基orケトン基)に近い側の末端から順に炭素原子に番号を振り、その番号によって「1位の炭素」や「C1」のようによぶ。