生化学

酵素の分類

気になる生化学シリーズ、今回は酵素の2回目として、酵素の分類のお話です。

酵素はこれまでに6,000種類ほど見つかっていますが、その触媒する反応のタイプや基質のタイプによって整理することができます。

今回のクエスチョンはこちら、

  • 酵素の名前の付け方は?
  • 7つのグループとは?
  • アイソザイムってなに?

こうした問いに答えられるよう解説したいと思います。

酵素の名称

酵素の名称は、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)が勧告する名付けルール(命名法)に従って、その酵素が触媒する反応特異性基質特異性に基づいて命名されています。

例えば、乳酸脱水素酵素は次のように命名されています。

系統名=lactate:NAD+ oxidoreductase(乳酸:NAD+ オキシドレダクターゼ)
常用名=lactate dehydrogenase(乳酸デヒドロゲナーゼ)

系統名は、様々な酵素を細かく区別するための正確な名称で、基質の名称に続けて反応の種類を説明する名称が表されています。すなわち、乳酸脱水素酵素の基質は乳酸(lactate)、反応の種類はオキシドレダクターゼ(酸化還元反応を触媒する酵素)で補酵素のNAD+も反応に関与するということを示す名称です。

一方、常用名は、普段使いの名称で、その酵素が触媒する反応または基質の語尾にアーゼ(-ase)と付くものが多いです。

しかし、こうした命名法が勧告されるより前に、古くから呼ばれてきた名称がある酵素は、そうした名称が普段使いに使われているものもあります(例:ペプシン、トリプシンなど)。

加えて、酵素には命名と同時にEC番号という固有の番号が与えられます。例えば、乳酸脱水素酵素のEC番号はEC 1.1.1.27です。

EC番号は4つの数字を並べて表しますが、その1つ目の数字が反応の主分類でEC1~EC7の7つに分けられています。

続いて、この主分類に沿って、酵素の分類を見てみましょう。

はなたか先生
はなたか先生
なお、EC番号の2番目の数字は基質、3番目の数字は補酵素、4番目の数字は通し番号です

酵素の分類

酵素はその触媒する反応の型に基づいて7つのグループに分類されます。

はなたか先生
はなたか先生
以前はEC1~EC6の6種類でしたが、2018年にEC7が加わりました

EC 1:酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)

酸化還元酵素は酵素酸化還元反応を触媒する酵素です。酸化還元反応とは、HやOを転移させる反応です。

酸化還元酵素のなかには、デヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)、レダクターゼ(還元酵素)、オキシダーゼ(酸化酵素)、オキシゲナーゼ(酸素添加酵素)が含まれます。

例えば、次のような酵素が代表的な酸化還元酵素です。

例)乳酸脱水素酵素(LD、LDH)、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼカタラーゼ、ウリカーゼ

EC 2:転移酵素(トランスフェラーゼ)

転移酵素は、ある化合物の一部(基)を他の化合物に転移させる反応を触媒する酵素です。

転移酵素のなかには、トランスアシラーゼ(アシル基転移酵素)、トランスアミナーゼ
(アミノ基転移酵素)、ホスホトランスフェラーゼ(リン酸転移酵素)が含まれます。また、ホスホトランスフェラーゼのうち、ATPなどの高エネルギー化合物からリン酸基を基質に転移する酵素をキナーゼ(リン酸化酵素)といいます。

例えば、次のような酵素が代表的な転移酵素です。

例)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)γ‐グルタミルトランスフェラーゼ(γ‐GT)クレアチンキナーゼ(CK)ヘキソキナーゼグルコキナーゼ

EC 3:加水分解酵素(ヒドロラーゼ)

加水分解酵素は、加水分解反応を触媒する酵素です。加水分解反応とは、分子に水(H2O)を付加して分解する反応です。多くの消化酵素が行う反応です。

加水分解酵素のなかには、エステラーゼ、グルコシダーゼ、ペプチダーゼ(ペプシン、トリプシンなど)が含まれます。

例えば、次のような酵素が代表的な加水分解酵素です。

例)アルカリフォスファターゼ(ALP)コリンエステラーゼ(CHE)アミラーゼ(AMY)、α‐グルコシダーゼ、スクラーゼ、ラクターゼ、リパーゼペプシントリプシンペプチダーゼ、~プロテアーゼ、ウレアーゼ

EC 4:脱離酵素(リアーゼ)

脱離酵素は、ある化合物の一部(基)を脱離し二重結合を生ずる反応や、逆に二重結合にある基を付加する反応を触媒する酵素です。除去付加酵素ともいいます。

脱離酵素のなかには、デカルボキシダーゼ(脱炭酸酵素)、アミノリアーゼ(脱アミノ酵素)、ハイドラターゼ(脱水酵素)が含まれます。

例えば、次のような酵素が代表的な脱離酵素です。

例)アルドラーゼ、エノラーゼ、フマラーゼ、アスパルターゼ、炭酸脱水酵素(カーボニックアンヒドラーゼ)、クエン酸シンターゼ(逆反応)

EC 5:異性化酵素(イソメラーゼ)

異性化酵素は、異性化反応を触媒する酵素です。異性化反応とは、分子内の原子配置を変化させて、異性体を変換する反応です。

異性化酵素には、ラセマーゼ、エピメラーゼ、ムターゼが含まれます。

例えば、次のような酵素が代表的な異性化酵素です。

例)ムタロターゼ、ホスホグルコムターゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、~ラセマーゼ、~エピメラーゼ

EC 6:合成酵素(リガーゼ)

合成酵素は、ATPのエネルギーを利用して2つの分子を結合する反応を触媒する酵素です。

合成酵素には、シンターゼ、カルボキシラーゼが含まれます。

例えば、次のような酵素が代表的な合成酵素です。

例)アシルCoAシンテターゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ

EC 7:トランスロカーゼ

トランスロカーゼは、生体膜を介して水素イオン、アミノ酸、炭水化物などを輸送する反応を触媒する酵素です。

例えば、次のような酵素が代表的なトランスロカーゼです。

例)NADH:ユビキノン還元酵素、ABCトランスポーター

アイソザイム

1つの反応を触媒する酵素に、タンパク質としての構造が異なるいくつかのバリエーションが存在することがあります。このような酵素どうしをアイソザイムといいます。

アイソザイムは遺伝子レベルの多様性や多量体酵素のサブユニット構成の違いによって生じ、アイソザイム間では基質親和性、最適pH、阻害効果、耐熱性、調整因子に対する感受性などの性質にわずかな差異が生じます。

体内では、細胞や組織によって異なるアイソザイムが使われていることがあります。これを指標にすることで、疾患部位の診断や予後の判定に用いることができます。

例えば、乳酸脱水素酵素(乳酸デヒドロゲナーゼ、LD)は4個のサブユニットからなる四量体で、サブユニットにはHとMの2種類があります。よって、5種類のアイソザイム(LD1~5)が存在します。

これらのアイソザイムのうち、心筋ではLD1が多く、肝臓ではLD5が多く存在しています。そのため、もしこれらの臓器が損傷を受けた場合には、それぞれのアイソザイムが血中に増加しますので、血漿中に現れるアイソザイムを検出することで、損傷がある臓器を特定することができます。このように臓器や細胞が損傷を受けたときに、体液中にでてくる酵素を逸脱酵素といいます。

LDのほかに、AST、ALP、CHE、AMY、アルドラーゼ、CK、ピルビン酸キナーゼなどの酵素にアイソザイムがあります。

今回のポイント

Check!

酵素の分類

  • 酵素はその触媒する反応の型に基づいて7つ(以前は6つ)のグループに分類される。
  • ①酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)…酸化還元反応を触媒。HやOを転移させる反応を触媒。
    例)乳酸脱水素酵素(LD、LDH)、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ウリカーゼ
  • ②転移酵素(トランスフェラーゼ)…化合物の一部(基)を他の化合物に転移させる反応を触媒。
    例)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、γ‐グルタミルトランスフェラーゼ(γ‐GT)、クレアチンキナーゼ(CK)、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ
  • ③加水分解酵素(ヒドロラーゼ)…分子に水(H2O)を付加して分解する反応を触媒。消化酵素に多い。
    例)アルカリフォスファターゼ(ALP)、コリンエステラーゼ(CHE)、アミラーゼ(AMY)、α‐グルコシダーゼ、スクラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、ペプシン、トリプシン、ペプチダーゼ、~プロテアーゼ、ウレアーゼ
  • ④脱離酵素(リアーゼ)…化合物の一部(基)を脱離あるいは逆に付加する反応を触媒。除去付加酵素ともいう。
    例)アルドラーゼ、エノラーゼ、フマラーゼ、アスパルターゼ、炭酸脱水酵素、クエン酸シンターゼ(逆反応)
  • ⑤異性化酵素(イソメラーゼ)…異性体を変換する反応を触媒。
    例)ムタロターゼ、ホスホグルコムターゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、~ラセマーゼ、~エピメラーゼ
  • ⑥合成酵素(リガーゼ)…ATPを用いて2つの分子を結合する反応を触媒。
    例)アシルCoAシンテターゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ
  • ⑦トランスロカーゼ…生体膜を介して水素イオン、アミノ酸、炭水化物などを輸送する反応を触媒。
    例)NADH:ユビキノン還元酵素、ABCトランスポーター

アイソザイム

  • 1つの反応を触媒する酵素に、タンパク質としての構造が異なるいくつかのバリエーションが存在する酵素どうしをアイソザイムという。アイソザイム間では、基質親和性、最適pH、阻害効果、耐熱性、調整因子に対する感受性などの性質にわずかな差異が生じる。
  • 細胞や組織によって異なるアイソザイムが使われていることがあり、疾患部位の診断や予後の判定に用いられる。例)LD、AST、ALP、CHE、AMY、アルドラーゼ、CK、ピルビン酸キナーゼ
  •  臓器や細胞が損傷を受けたときに、体液中にでてくる酵素を逸脱酵素という。

はなたか先生
はなたか先生
今回はここまで!

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